靴下を海外で製造する際の為替リスクとその対策とは?

海外(中国、台湾)の工場で靴下を製造している私たちにとって為替リスクはいつも頭の片隅から離れない悩みの種です。

2022年ロシアによりウクライナ侵攻をきっかけに円安が一気に進みました。

同年の3月はじめが1ドル=115円前後、その後上下を繰り返しながら2024年の夏ごろには一時160円まで上昇しました。たった2年で29%も円の価値が下がったのです。

あまりにも急激な下落幅で眠れない日々を過ごしました。

そして2025年の7月現在、ようやく145円前後で落ち着いてきたと思ったのも束の間、今度は米ドルに対して台湾ドルが急騰するという新たな問題に見舞われました。

大幅なコスト調整を余儀なくされており、気の休まる暇がありません。

関内で商談帰りに山下公園。Nikon Zfc 2025/03/14
目次

靴下海外生産における円安の影響とは

私たちは主に中華圏(台湾、中国)で靴下を製造しています。

国際通貨である米ドルで取引をしており、日本円で米ドルを買う必要があります。

米ドルに対して日本円の価値が下がるのが円安です。

ドルを調達するのにより多くの円が必要になるため価格があがってしまいます。

靴下海外製造における円安の対策とは

あらかじめ米ドルを購入しておく

あらかじめ米ドルを購入しておけば、そのときのレートにて金額の固定ができるので、さらに円安が進んだときのリスクをヘッジすることが可能です。

米ドルを購入時よりも円高になると損失が出ます。

日本国内の工場で生産する

日本国内生産に切り替えると為替の影響が少なくなります。

ただ各種機械を動かすのに必要な油や糸などの原材料を海外から輸入が必要な部分について間接的な影響があります。

また日本は世界で一二位を争う少子高齢化国になります。

アパレル産業にも高齢化の波が押し寄せており、キャパシティを確保できるかどうかの問題もあります。

ドル以外の通貨で決済を行う

2022年急激な円安が進み、毎晩眠れない夜を過ごしていました。

「対ドル以外の通貨だと下落率はどのくらいなんだろう」

夜中にふとおもいついて調べました。

そこで見つけたのがトルコリラです。

ドルに対する日本円の下落率が約26%なのに対して、トルコリラは日本円に対して88%下落しています。(2022年3月と2025年1月の比較)

「ここれは」と思って、トルコで工場を探しました。

共に通貨が下落している国同士で取引を行えば円安ドル高に苦しむことがなくなるではないかと思いました。

しかしながら自国通貨の価値が下がり、輸入品の価格が暴騰している状況下でリラでの取引を受けてもらえませんでした。

リラ取引は叶いませんでしたが、実際トルコで製造を行い、トルコ製靴下の良さを知ることができたのは大きな収穫でした。

靴下海外製造における「現地通貨」と「ドル」の関係とは

ドルに対して円が下がれば、日本への輸入コストが上がります。

一方で、ドルに対して現地通貨(台湾ドルや人民元など)が上がると、現地から日本へ輸出する価格が上がります。

台湾ドルの急騰がもたらす影響

2025年の5月以降、ドルに対して台湾ドルが急騰しました。

1USD=33TWDだった為替が、わずか2カ月で、1USD=29TWDになりました。12%の台湾ドル高です。

一見すると「たった4TWD(日本円で約20円)の違い」と思われるかもしれませんが、金額が大きくなると無視できません。

例えば1000USDですと4000TWD(日本円で約2万円)もの差になります。

靴下海外製造における「現地通貨高」の対策とは

円安になると、日本国内のニュースで大きく報道されます。

ドルに対して海外通貨が高くなる場合、経済ニュースなどで少し触れられる程度であまり報道されません。

現地通貨で直接決済する

多くの取引は「米ドル建て」で行われていますが、現地通貨で直接決済できるケースもあります。
たとえば、台湾ドルや人民元など現地通貨で支払うことで、為替リスクを軽減できる可能性があります。

ただしこれは、日本円がドルに対して強いときに限って効果的です。
現在のように円がドルに対して弱い場合は、かえって不利になることもあります。

産地を分散する

2025年の4月から続く台湾ドルの急騰を受けて、製造コストは大きく上昇しています。

将来どのような動きになるか予測ができません。仮にさらに上昇が進めばコストへの影響がより大きくなります。

リスクを分散するために、産地の分散化を行うのも一つの手段です。例えば中国の人民元は対ドル相場が比較的安定しており、今のところ大きな変動は発生していません。

売価をキープするために品質を落とすのではなく付加価値をつける考え方

最近「これ以上売価をあげられないので品質を落として価格をなんとかしたい」

との声もちらほら聞かれるようになってきました。

しかしながら為替の影響は非常に大きく、2022年3月から現在までの米ドルに対する円の下落率は約21%です。仮に品質を落として価格を下げたとしても、さらに円安が進めが帳消しになってしまいます。

「現地通貨高」のリスクもあります。

ターゲティングとの関係性もあります。

品質をとにかく履ければ良いというレベルまで落とすとワンコインショップとの価格競争に巻き込まれかねません。

仮に元々380円で販売されていた靴下の品質をワンコインショップと同じにしたとして、もしも消費者がそれに気がついた場合、引き続き御社の商品をご購入頂けるでしょうか。

私たちは製品としての品質は落とすことなく、安さに頼らない製品づくりを検討されることをおすすめしております。

編集後記

上井草と上石神井の間に「ここは東京?」と思わせるような田園風景が広がる一角を発見。

ここに住んだらどんなに気持ちよいのだろうかと妄想しつつ、Birdyのペダルを漕いで実家へ向かう。

走行距離は20km行くか行かないかくらい。

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この記事を書いた人

三国志のゲームにはまり高校を卒業したあと東京三鷹市の中国語専門学校へ入学。馬好きが高じて中国内モンゴルへ渡り、中国語とモンゴル語を学んだのち、東京のぬいぐるみ雑貨メーカーで9年間生産管理の仕事をする。2014年に起業し、「靴下ブランドを立ち上げたい」ブランドに向けた「伴走型でじっくり取り組む靴下製造サービス」を立ち上げる。起業してからの11年間で、台湾人の同僚と二人三脚で個人から1200店舗で販売を手がける法人まで数多くのブランドの靴下製造を手がける。ご近所、海外を問わずいつも折り畳み自転車Birdyで移動している。

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